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【知恵の森】日本人の心を映す、大きな木の物語探訪『本朝巨木伝―日本人と「大きな木」のものがたり』牧野 和春 (著)

2011-01-08 09:33



これはもはや神である。
巨木は、その地域の象徴であり、また悠久の時を生きる。そして時に、それを見上げる者に、おおらかな気持ちと耐える力を教えてくれる。

テクノロジー優先社会における人間疎外感、自然破壊にともなう際限のない不安、現代はさまざまなストレスに蝕まれている。どこかに救いは・・・そう思って、ふと見上げれば、そこに一本の巨樹があって、ただ黙ってうなずいていてくれる。

本書は、23項目にわたる巨樹・巨木をめぐる旅を紹介。巨樹が生きてきた遥かな時を想い、日本各地に残る民俗探訪の一冊。


目次より
序文 巨木と人生 荒俣宏

1章 山桜に逢いたい
   桜さくら●狩宿の下馬桜[静岡県]

2章 原生林の奥深く
   板の根●サキシマスオウノキ[西表島]
   水中木出現●魚津埋没林[富山県]

3章 女の力を宿す
   宿根の枝●さしまたのツバキ[富山県]
   大アベマキ霊験記●口大屋の大アベマキ[兵庫県]
   大酒呑みの藤●牛島の藤[埼玉県]
   老木の乳柱●飛騨高山の大銀杏[岐阜県]

4章 生活の守り神
   養蚕の神●薄根の大桑[群馬県]
   巨樹に憩う●椋本の大椋[三重県]
   阿波の「阿呆水」vs 大楠●加茂の大クス[徳島県]
   縁結びの木●愛染桂[長野県]
   殿様拝領の松●萩原の大笠松[群馬県]
   語部を失った巨樹●府馬の大クス[千葉県]

5章 天にも昇る気
   巨樹の揃い踏み●智満寺十本杉[静岡県]
   金花芳香二里四方●三島神社のキンモクセイ[静岡県]

6章 異形・異端の奇
   天狗の枝垂れ栗●小野のしだれ栗[長野県]
   イザナギの梛 凪ぎの梛●熊野速玉大社のナギ[和歌山県]

7章 歴史を写す
   林立栗柱の怪●チカモリ遺跡出土の木柱根[石川県]
   のたうち殖える天神の梅●藤川天神の臥竜梅[鹿児島県]
   女性上位の夫婦欅●根古屋神社の大欅[山形県]
   渋柿の系譜●庄内ガキの原木[山形県]
   栃の木は残った●利賀のトチノキ、脇谷のトチノキ[富山県]
  
8章 樹齢千年の死
   一期一会の大樫●高尾山麓の千年樫[東京都]

付録 牧野和春・選「日本全国、各都道府県一本の巨木マップ」


著者は、巨木研究の第一人者。慶應義塾大学文学部を卒業後、ジャーナリストをへて1968年、牧野出版を創立。巨木と日本文化の深いかかわりを求めて全国を訪ね歩くこと十年余り。その成果を多くの書物に表している。
著者によれば、巨木に見せられる最大の要因は「異相」にある。庶民の巨木信仰、民間伝承を考察するうち、神として崇められる巨木が結局はその異様な姿が神性の源泉を持つと気付かされたという。

巨木は合理化ののもとに、標準化された現代に特に見直す必要がある21世紀のモニュメントにありうる可能性があるかもしれない。

もし、巨木を見る機会があれば、先達となる一冊です。ぜひ読んでみてください。